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ヨドバシカメラの採用担当者ブログの記事 http://job.rikunabi.com/2015/company/blog/detail/r571700004/26/



新入社員が退職した。

入社してわずか10日。

「この会社は自分に合わないと感じた」というのが退職理由。

あまりにも漠然とした理由なので、具体的になにがどう合わないと感じたのか尋ねてみた。

すると。

「販売はアルバイトの延長のような仕事。ずっと続けていく気にならないし、自分に向かない」とのことだった。

当社では、2週間の新入社員研修期間中に売場での販売実習を数日行なう。

講義とロールプレイングで学んだ接客応対技術を、実際に売場で体験するのが目的だ。

その実習の結果、新入社員のKさんは「自分に合わない」と思ったそうだ。


辞めてどうするのか、Kさんに聞いてみた。

「公務員を目指します。」

まただ。採用や研修を担当していると、毎年必ずこういう若者と遭遇する。

「安定していて、楽そうだから」という、かつての私と同じ発想。


いや、決めつけるのはよくない。公務員(地方上級とのことだった)を目指す、彼なりの確固たる理由があるのかもしれない。


「公務員になりたいのは、なぜ?」

「地域の人たちに貢献したいからです。」

「地域の人に貢献というと、具体的にはどういうことをしたいの?」

「・・・市役所の窓口で、住民の相談に乗ったりとか・・・」

「ヨドバシカメラの店でお客様の相談に乗るのはアルバイトの延長にすぎないと思うのに、市役所で住民の相談に乗るのはやりがいがあると思うんだね。それはどうして?」

「・・・いや、その・・・民間とは違う、というか・・・」


ああ、やっぱり。「安定」「楽そう」公務員志望シンドロームだ。

その発想が悪いとは言わない。

しかし、それだけでは信念を持って公務員を目指している人たちとの選考で勝ち残るのは難しい。

また、仮に公務員になれたとしても、決して幸せにはなれない。

残念ながら、Kさんに当社での仕事を続ける気はないようだったので、慰留は諦めた。

しかし、わずか10日とはいえ同じ会社で勤めた仲間である。不幸にはなってほしくない。

Kさんには迷惑だったかもしれないが、私なりの「働いて幸せ」という状態を実現するための考え方を伝えることにした。

「Kさん。君はゲームが好きだったね。」

「え?あ、まぁ、好きですね。」

「対戦ゲームは好きかい?ガンダムエクストリームバーサスとかさ。」

「好きですよ。けっこうやってます。」

「そうか。アレはおもしろいよな。僕も好きでね。いい年してゲーマーなんて恥ずかしいけど。」

なんの話なのかといぶかしげなKさんだったが、私はかまわずゲームの話を続けた。

対戦ゲームのおもしろさについてお互いにしばらく語り合ったあと、本題に入った。

「ところでKさん、ガンダムEXVSを初めてプレイする人が、対戦プレイで君に勝てるかな?」

「いやぁ、それはムリでしょう。僕、けっこう強いですよ。」

「そうか。じゃあ、初心者だとあっという間に君に負かされてしまうだろうね。」

「そうでしょうね。」

「じゃあ、質問。手も足も出せずにキミに負けた初心者くんが『ガンダムエクストリームバーサスなんてつまらない!クソゲーだ!』と言ったとしたら、Kさんはどう思う?」

「それはおかしいでしょ。ゲームがつまらないんじゃなくて、自分がヘタなだけじゃないですか。」

「そうだよな。楽しさを理解するには練習と経験が必要だよな。ちょっとやってみただけで『つまらない』とか『自分には向いていない』っていうのは、早すぎるよな。」

Kさんの表情が変わってきた。

伝わっただろうか?楽しく、幸せになるには努力や我慢も必要なのだということが。

実感できただろうか?物事の本質を理解するには、長い時間が必要なのだということが。

気のせいかもしれないが、Kさんの雰囲気が変わった気がした。

オドオドしたところが消え、目から意志が感じられるようになった。

「Kさん。社会人の時間は長い。22歳で入社して、定年は60歳。約40年もの年月だ。

つまり社会人にとって入社後の10年は、大学で言えば1年生に相当する。

たとえば大学の野球部に入部したとして、1年生のうちは球拾いやグラウンド整備、筋トレなど地味なことばかりだろう。

楽しいどころか、むしろツラいだろうね。でも、彼らは野球部を辞めない。なぜだろう?」


「・・・野球が好きだから、ですか?」

「そうだろうね。野球が好きで、うまくなりたい!という情熱がある部員は、そのつらさの向こうに自分の成長があることをイメージする。

だから乗り越えられる。逆に、なんとなく野球部に入った人はとても耐えられない。

『野球つまんね。サッカー部に行こ。』と思ってしまう。」


「・・・」


「そうやってサッカー部に移った一年生を待っているのは、やっぱり筋トレや100メートルダッシュなどの地味な練習だ。

サッカーに対する情熱がない人は『サッカーもつまんね』と思って転部する。

その後は似たり寄ったりだ。

テニス部では素振りに嫌気がさし、バスケ部ではハードさに耐えかね、吹奏楽部では音を出すのに一苦労、マンガ研究会に入ってもいきなり絵が描けるようになるわけじゃないし、演劇部では発声練習ばかり・・・すべて同じだ。

最初からいきなり上手にできたり、楽しいなんてことは滅多にない。

本当の楽しさにたどり着くには、努力と情熱が必要だ。

転職を繰り返す人は、これと同じ。楽しさにたどり着く前に職を変えてしまうから、幸せになれない。」

「・・・僕が、そうなると?」

「それはわからない。ただ、公務員を目指す理由がさっきの答えのレベルだとすると、幸せにたどり着く可能性は低いぞ。 大切な人生だ。自分がどんな職につくべきかを、もっと真剣に考えたほうがいいと思うよ。」

「・・・わかりました。ありがとうございます。」


Kさんが、どんな気持ちで私の話を聞いたのかはわからない。

「こいつウゼぇ。」と思っていたかもしれない。

しかし、相談を終え退職届を提出して去っていく時の彼は、それまでと違って後ろ向きな逃避ではない、前を向いて一歩踏み出そうとする者の顔をしていた。

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